わが家の付近で、朝な夕な オスキジが啼いておる。
土手の向こう、郵便局の裏手、体育館の横、校庭 … 恋の季節、相手を探し歩いて啼いておる。
このあたりにはメスキジがおらんのに、それを知ってか知らずか めぐり逢えぬまま、今日も啼き喚ぶ。
いや。メスキジが いようがいまいが、本能が為すままの咆哮やもしれん。
ワタシとて、絶叫したくなるよな時がある。 … しやしないが、吠えてみたくもなる時がある。 朦朧としたワダカマリを抱え、どうにも喚きたくなる。
「ケン ケー!」
気高く聞こえつつも、本当は心悲しげな そんなオスキジの啼き声が、喚かずにいられない自分に 深く響く。